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祖母は日本刀の職人(柄巻師)でした

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僕の地元は「刃物のまち」と呼ばれている岐阜県・関市。

 

最近では市の職員がエヴァのコスプレをしたり、頭のおかしいPRムービーで話題になったり。

モネの池」「五郎丸ポーズの仏像」なんかも一時期騒がれていたのは記憶に新しいところです。

 

今は実家を出て妻と二人で生活していますが、県内で暮らしているので実家にはちょくちょく帰るようにしています。

 

 

実家には日本刀がある

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まぁ模造刀なんですけれど。

僕が生まれた時、僕の為に祖母が作ってくれたものです。

 

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刀身の部分に、僕の生年月日と名前が彫られています。(名前部分は伏せてあります)

 

 

幼少期、この刀が僕の自慢でした。

家庭内でも、長男である僕だけがこの刀を持っていた事が嬉しかったのです。

弟とはその事で喧嘩をしたこともあったっけ。

 

もちろん、友人でもこんなものを持っているヤツは誰も居なかったし、この刀が飾られている和室が自宅に友人を招いた時の遊び場だった事もあり

 

「これ、何?」

「おばあちゃんが僕に作ってくれた刀なんだ!」

 

そんなやり取りをよくしていて、僕はどこか誇らしくなっていた事を思い出します。

 

模造刀とは言え、全長は1メートル近い鉄の塊。

カッコつけて振り回したら小学生の体にはデカすぎて障子を破ったり、そもそもあぶねーからやめろってこっぴどく叱られたこともありました。

 

僕の祖母は柄巻師

柄巻師(つかまきし)という職業をご存知でしょうか。

刀の持ち手である柄を補強して、握りやすく滑りにくくする職人の事を言います。


日本刀の職人たちVOL6 柄巻師 :文部科学省

 

僕の祖母は、この仕事をしていました。

上で挙げた模造刀も、その仕事のツテで刀身や鞘を用意し、柄は祖母が巻いたものだそうです。

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柄巻きの菱部分の形を整えるため、菱紙という和紙が挟んであるだとか

柄は木で出来ているけど、補強のため鮫の皮を貼ってあるだとか。

 

両親が共働きだったこともあって、おばあちゃん子だった僕は、祖母の仕事場でそんな話を教わりながら仕事をする祖母の姿をよく見ていました。

 

中学生の頃、そこで聞いた話と自分で調べた柄巻きの事をノートにまとめて、祖母の力も借りながら1本の柄巻きを仕上げたことがあります。

今はどこに仕舞ってあるのか分からず発見できなかったけれど、夏休みの自由研究として出したそれは学内作品の金賞を取った事もありました。

 

刃物のまちで、日本刀の職人である祖母がいるという特殊な環境で僕は育ったのです。

 

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現存の職人は少ない

2年近く前の番組のようですが、NHKで柄巻師が取り上げられたというまとめを見ました。

この番組によると、現在柄巻師は全国で約10人しか居ないのだとか。

 

このような職人の後継者不足は深刻な問題になっているみたいです。

職人の孫だから継がなきゃいけないって事はないんだけれど、なんとなくモヤモヤしてしまいました。 

 

 

 

僕は気が付くのが遅すぎた。

 

 

 

今、祖母は要介護認定の認知症を患い、施設で暮らしています。

柄巻きの事どころか、孫の僕を見ても誰だか分からないって状態。

 

「このお兄さんは、誰?」そう言われた事がショックで、なかなかお見舞いには行けていません。認知症だから仕方ないとは分かっているけれど、元気だったころの祖母の姿とのギャップが受け入れられないのかな。

 

先日、実家で久しぶりにこの模造刀を見て、色々な事を思い出した、そんなお話。

 

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