皆さんが日本製の服、メイドインジャパン、と聞いて想像するのはどういったものでしょうか?
日本で織られた生地を熟練の職人が1枚1枚丁寧に縫っていて、高品質な服。そんなイメージなのではと思います。
僕がアパレル業界に入ったのは5年前。新卒の時です。
3年働いたのち、会社が無くなって業界を離れ今のビルメンへと落ち着いたわけですが
今回は当時働いていて衝撃的だったアパレル業界の情報について記事にしようかと思います。
実は適当な「メイドインジャパン」
『メイドインジャパン』、『日本製』という表示の基準というものはかなり大雑把というか適当な部分があって、
これは製造業で働く人なら何となく知っているかと思いますが
簡単に言えば
『最終の工程が日本であれば日本製の表示ができる』
となっています。
アパレルで言えば、
中国製の生地を中国の縫製工場で縫って、日本へ輸入し、仕上げのボタン付けのみを日本で行ったとしても、日本製表記ができてしまうという事。*1
日本製と書かれてるからといって、全てが日本で作られているわけではないのです。
日本の縫製工場は死にかけている
僕が働いていた会社で作っていた服は、百貨店やちょっと高めのセレクトショップなんかに卸している『そこそこ良い服』でした。
なので、先に挙げたようなギリギリ日本製という服ではなく、日本の生地屋から仕入れた生地を国内の縫製工場で縫い、仕上げのプレス(アイロン掛け)も日本で行っていた、「(そこそこ)ちゃんとした日本製」だったわけです。
しかしながら、日本の繊維関連工場はかなりの高齢化が進んでいます。
『日本人工員の平均年齢は60歳』なんて話も聞くレベル。
僕はファッションの専門学校卒ですが、ブランドを立ち上げたいとかパタンナーをやりたいという話はあっても、服の縫い子さんになりたいって話は聞きませんでしたし
事実、国内にある縫製工場では労働者確保の為に中国や韓国からの技術研修生を雇っているのが現状です。
つまり、日本の工場で縫っているとは言っても実際に手を動かしているのは中国人研修生だというケースがほとんど。
これはもちろん縫製工場だけの話ではなく、織布、染色、洗い、プレスなど、様々な工程において外国人研修生が入っているという事を意味しています。
成り手が少ないということももちろんですが、日本人の人件費では量販の価格と合わない、という事も拍車をかけている一因です。
外国人研修生の待遇っていうのは本当に闇で、時給換算すれば500円くらいなんて労働条件は割とザラ。
その辺にメスが入った事件のニュースも先日ありましたね。
中国人研修生であれば、ある程度経験を積むと旧正月の帰省とともに戻ってこないケースも多いので、都度また新しい人材を集めてくるだけだ、と話す縫製屋さんにも会ったことがあります。*2
ですが、そうでないと実現できない商品単価なんですよね。大半の量販の服というのは。
つまり日本人の縫い子が賄える単価の仕事というのが非常に限られているという事です。
現状の工賃単価では、業界はまさに緩やかな死を迎えるだけだと、僕は思ってしまった事を思い出します。
メイドインチャイナの方が良いケースもある
圧倒的な人件費の安さで『世界の工場』として躍進してきた中国は、アパレルではユニクロを初めとした日本企業の自社工場が建てられているのは皆さんも知っているかと思います。
製造から販売までを一貫として行っているユニクロのような業態を『SPA*3』と呼びますが、このような会社では日本と同レベルの品質を現地で保てるような自社工場を海外に持つことで人件費を抑え、洋服の単価を下げているわけです。
しかしながら、管理者が日本人であるために高いクオリティが維持されているんですね。
こうなってくると、実際には中国人研修生が縫っている日本国内の縫製工場と中身は大差無いと考えてもおかしくはありません。
むしろ、コストが抑えられる分中国での生産が上回っている場合すらあります。
思考停止で有難がるのは辞めたほうがいい
『メイドインジャパン』『日本製』
と聞くだけで有難がり、良い物だと思考停止してしまうのは、
ことアパレル業界においては危険かもしれない、というのは今までの話で伝わったかと思います。
『メイドイン○○』『○○製』というブランドに囚われず、良い物は良い、と判断出来る感覚を身につけたいものですね。
このような感覚を磨くには、やはり実際には触れて、袖を通してみるのが良いです。
そうしていくと、安くても良い服、逆に高くても品質の悪いものというのはわかるようになってくるはずです。
最後に
ここまで書いてきた内容は、僕の働いていた量販のアパレルのものです。
プレタポルテ*4においてはこの限りではないかと思いますのでご理解下さい。
業界を離れ、徐々に忘れつつあるアパレルの現状を書きました。
現状と言いつつ、2年前の事ですが(笑)
おわり